2007年04月27日

鷺沢 萠「ウェルカム・ホーム!」

鷺沢さん作品は読むの初です。
中に収められているのは2編の家族のカタチ。


「渡辺毅のウェルカム・ホーム」

家族:本人、本人の大学時代からの友人、その息子
そして毅の恋人がかかわってくる。


「児嶋律子のウェルカム・ホーム」

過去の家族:夫(律子にとっては2番目)、夫の連れ子
そして夫の連れ子の恋人が2人をつなぐ。


どちらも子供とは血のつながりがない。
でもそんなのまったく重要じゃないんだと考えてしまう作品です。


どちらもいわゆる「普通のカタチ」ではないのかもしれない。
前半の家族は家に大人の男2人が同居している時点で
一般的な家庭からは離れているし、
後半の家族では、夫とはとっくに関係が破綻しているけど、
連れ子との絆は深まっていく。


でも、そもそも「普通の家族」という考え方自体が
おかしいのかもしれない。
カタチだけは普通でも、中を覗けば家族といえないほど
表面的な絆しか築いていない家庭は

いっぱいある。
それを本当の意味で家庭と呼べるかといえば
そうでないような気もするし。
とにかく普通の形とは・・・
なんて考えてるのがばからしくなるのがこの作品。

この作品の家族たちは、血はつながっていなくても、
相手を思い、自分が家族のためにできることを探し、
そうして絆を築いていく。
家族のつながりって最初からあるものなんじゃなくて、
作りあげていくものなんだと実感しました。


おもしろかったのは、この家族の形に至るまでの主人公二人の過去と
気持ちの移り変わり。

一般人よりはけっこうディープな人生を送ってるんだけど、
鷺沢さんの軽快な文体でカラカラっとつづられているのがGOOD。

特に前半の主人公の気持ちの移り変わりは、
気持ちがストレートに行動に出ていて、見ていてかわいらしいです
(主人公は男なんだけどね)

後半のラストは涙が出てしまいました(;−;)

また、登場する子どもたちは
自分に愛をくれる人が誰か、ちゃんとわかっている。
ちゃんと見つめている。
それは血によって決まるわけじゃないものね。

ところで鷺沢さんの作品ってみんなこんな明るい感じなんですかね?
けっこう意外でした。
もっとドロドロした世界感なのかと思ってたので・・・。




ウェルカム・ホーム!

著者名:鷺沢萠(著)
出版社:新潮社
出版年:2004.03
ISBN :9784103780052

posted by izura at 13:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 作者−さ行

2006年10月28日

杉本苑子 「今昔物語ふぁんたじあ」(初・続・続々)

おそらくこの本は現在廃刊になってると思うけど、
とてもいい本なので紹介しちゃおう^−^


タイトル通り、古典『今昔物語』を現代語訳したもの。
でも話自体が庶民の話で堅苦しくないので、古典が苦手な人もすんなり読める。


『今昔物語』とは、平安期の庶民の説話みたいなものだ。
だから庶民の生活がユーモアも交えて書かれており、とても楽しい。

当時の農民といったら、もちろん生活するので精一杯。
江戸時代のような娯楽などもほとんどなかったのではないかなあ。
私達が歴史で学習する平安国風文化は貴族の文化であり、
庶民の生活とはかけ離れているしね。


唯一庶民が心のよりどころにしていたのは、
おそらく浄土の教えだったんじゃないかな。
仏教はどんどん広がりを見せ、とくに
「現世で良い行いをすると死後極楽浄土へ行ける」という浄土の教えは、
農民に急速に広がっていったそうだ。


今昔物語では、お上、地獄、罰などに恐れおののく姿、
普段の生活に喜怒哀楽豊かに感じ入る姿をコミカルに描いている。
今の時代でも十分楽しめる作品だと思う。


今昔物語ふぁんたじあ

著者名:杉本苑子(著)
出版社:講談社
出版年:1978.01
ISBN :4061314378




今昔物語ふぁんたじあ 続

著者名:杉本苑子(著)
出版社:講談社
出版年:1978.05
ISBN :4061314742




今昔物語ふぁんたじあ 続々

著者名:杉本苑子(著)
出版社:講談社
出版年:1980.04
ISBN :4061316249

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2006年10月06日

清水義範 「永遠のジャック&ベティ」

清水作品の中でもお気に入りの一冊となっているのが、
この「永遠のジャック&ベティ」。
短編集です。


内容は

永遠のジャック&ベティ
ワープロ爺さん
冴子
インパクトの瞬間
四畳半調理の拘泥
ナサニエルとフローレッタ
大江戸花見侍
栄光の一日



どれも読んでて「ぷっ」と噴き出したくなるおもしろさ( ̄m ̄)
どれも読んでて「わかるー!」と同調したくなる絶妙さ。
内容的にはちょっと昔のことのように感じるものもあるけど、
大人ならかなり楽しめると思う。


私が一番気にいっているのは、表題作「永遠のジャック&ベティ」。

中学校の英語の教科書、不自然な会話だなあと思ったことはありませんか?
「私はベティです。あなたはジャックですか。」
「はい、ボクはジャックです。」
「あなたは昼食に何を食べますか」
「私はサンドイッチたちを食べます」
など。ばか丁寧というか、そんな会話が教科書上で繰り広げられている。


そこに目をつけたのが清水さん。
模倣を題材にして作品を作り上げていく彼お得意のパスティーシュで
話をつくりあげてしまった。
教科書上のジャックとベティが数十年の時を経て再会し、
言語中枢が麻痺して中学生の言語能力レベルに下がってしまい、
会話したといたら・・・という設定になっている。


もう一つお気に入りは「ワープロ爺さん」。
ワープロを買ったばかりのお爺さんが、悪戦苦闘する様を描いている。
誰にでも覚えがあるでしょう。コンピュータの誤変換。
それを題材にして物語ができあがってるんだけど、これまた絶妙!

「どうも変な児がでる。幹事にならん名。」といった具合になっちゃうので、
だんだんイライラしていく爺さんの姿がおちゃめでおもしろい^−^



永遠のジャック&ベティ

著者名:清水義範(著)
出版社:講談社
出版年:1991.09
ISBN :4061849840

posted by izura at 09:14| Comment(2) | TrackBack(0) | 作者−さ行

2006年09月21日

鈴木光司 「リング」

言わずと知れた、大ブームを巻き起こしたシリーズの第1巻目。
「リング」「らせん」「ループ」と続き、
映画はアメリカリメイクもされましたね^−^


私は原作→映画(真田広之、松嶋菜々子出演)の順で見たんだけど、
この本はもう恐ろしいのなんのって!
本を読んで背筋がぞぞぞーっとしたのは、今のところこの作品です(−−)


特に、主人公の記者が入手したビデオの内容を描写している場面は、
一気に虫が数十匹背中を駆け上がった。
読みながら想像力をフル回転させてしまう。
映画の同じ場面を見たらかえって興ざめしてしまったほど、
本の方が数十倍恐ろしいと私は思う。


もう一つ、この作品のおもしろさは「ホラーミステリー」であるということ。
たたりだとか呪いだとかが出てくるあたりはホラーだけど、
自分にかかった呪いのタイムリミットが近づきつつある中、
ビデオの正体を必死で暴こうとする様子は、ミステリーさながら。
だんだん手がかりがつかめていく様もおもしろい。


映画しか見たことない、という人はぜひご一読を♪
続編の「らせん」をいち早く見たくなる傑作だと思う。


リング

著者名:鈴木光司(著)
出版社:角川書店
出版年:1993.04
ISBN :4041880017

posted by izura at 15:25| Comment(2) | TrackBack(0) | 作者−さ行