2007年11月07日

茨木のり子 「倚りかからず」

私の大好きな現代詩人のひとり・茨木のり子さん。
中学生のときにガツンと頭をやられたのが「自分の感受性くらい」という詩。
最近ではヤンキー先生・義家弘介さんが現役時代に生徒に紹介してたのを見たな。


自分の感受性くらい

自分で守れ

ばかものよ



この詩集は10年近く前に出された本です。
当時茨木さんはすでに70歳を超えていたけど
昔の体験などを詩に盛り込み、現代人へ警鐘を打ち鳴らしている。


私がこの人に抱くイメージは、
縁側のある、古いテレビだけがある6畳間に
背筋を伸ばして凛としたたたずまいで正座している老婦人。
体は老いても、周囲のめまぐるしい変化に動じることなく、
周りに迎合することなく、
しっかりした健全な心をいつまでも保っている人のような気がする。
決して声高に自分の考えを主張するわけではないんだけど
この人と話すと、自分の心が洗われていくんじゃないかと勝手に思っている。

本当に大事なものが見えてきそうな気がしてくる。



「倚りかからず」

もはや
できあいの思想には倚りかかりたくない
もはや
できあいの宗教には倚りかかりたくない
もはや
できあいの学問には倚りかかりたくない
もはや
いかなる権威にも倚りかかりたくない
ながく生きて
心底学んだのはそれぐらい
じぶんの耳目
じぶんの二本足のみで立っていて
なに不都合のことやある


倚りかかるとすれば
それは
椅子の背もたれだけ




倚りかからず

著者名:茨木のり子(著)
出版社:筑摩書房
出版年:1999.10
ISBN :9784480803504

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2007年09月16日

赤川次郎 「死者の学園祭」

ストーリー自体は学園に盗品オークションを絡めてきたり、
黒幕が意外な人物だったり、とそれなりにおもしろいんだけど
(私はオチを知っていたのでなんとも言えませんが)
まずギャップを感じたのがやはり時代背景。

だって30年前の作品だもんね。
携帯もないから家の電話だし、したがってよくすれ違いも起こる。



そして何より違いを感じたのは、登場する女子高生の言葉遣い!

「何やってるのかしら?」
「もっと近くに行ってみましょうよ」


これが昭和52年当時の女子高生の会話です^−^

この原作を読んだのは初めてだったけど、
高校で大人気の先生が女子高生と「清らかな交際」をしていたり
大学生と高校生が婚約しちゃったり
学校がとんでもない目的で設立されたことがわかったり、
となんとも突っ込みどころ満載でした。

これを当時何の違和感もなく読んでたのか・・・。
時代の流れは大きいものですね〜


死者の学園祭

著者名:赤川次郎(著)
出版社:角川書店
出版年:1983.01
ISBN :9784041497104

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2007年08月05日

乙一 「暗いところで待ち合わせ」

この表紙でしょ。
このタイトルでしょ。
しかも作者は乙一さんでしょ。
もうどんな話かは決定だと思うでしょ。


彼の作品「GOTH」を読んだことあるけど、
最後はぞぞーっとして終わったんですよ。
だからそういうジャンルの話だと思って、
好きなジャンルじゃないけど、まあいいかと思って読んだわけです。


目に光を失った女性ミチルと、同僚を殺した罪で追われるアキヒロ。
この二人がひょんなことで知り合い、奇妙な同居生活を送ることに・・・
というストーリー。


前半は、突っ込みながら読んだ。
なかなか二人の接点が登場しない。
しかもミチルは、アキヒロが近くに潜んでいるのに気づかない。
いくら目が見えなくても、気配すら感じないのか?
と不思議でしょうがなかった。
100ページ読んで、「えー、こんなだらだらした調子で終わるわけ?」と
半ば機械的にページをめくってた。


でも、後半。
やられましたよ、私。

「お、いよいよ接点登場か?」と思ったあたりから、
どんどん展開がリズム良くなり、
二人の気持ちもどんどん変化し、
最後はびっくりのクライマックス。
前半のまったり感は、すべて後半のためにあったんですね〜


人と交わって傷つくなら、最初から交わらなければいい。
最初から人と関わらなければいい。
そんなこと、誰でも思ったことはあるんじゃないかな。
特に、自分の気持ちが伝わらないとき、
ひどく裏切られたときなんか、
親しい人なんて作らないほうがずっと気楽、なんて
思ったこともある。


でも、そんなことできやしない。
人と関わらずに幸せを感じることなんてできない。
傷ついてもぶつかっていって、その中で人の温かさや自分の思いに気づくことが、
自分をどれだけ優しい気持ちにさせ、自分を癒すことか。


ミチルとアキヒロがどんなラストを迎えるのか、
ぜひ読んでいただきたい作品です。
しかも、ラストの展開は予想だにしなかった展開になっていき、
1冊で2度おいしい、2種類のジャンルを楽しめる作品になっています。


それにしても、
乙一さんって、こんな作品書けるんだあ。
この人の引出しの多さにも脱帽。
もっと彼の作品も読んでみたいです^−^

暗いところで待ち合わせ

著者名:乙一(著)
出版社:幻冬舎
出版年:2002.04
ISBN :9784344402140

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2006年09月28日

赤川次郎 「死者の学園祭」

赤川次郎を年代の古いものから読むことにしたので、
まずはこの作品「死者の学園祭」。
最近フカキョンで映画にもなったよね。
コミック版も読んだことあるし、結構有名な作品だと思うんだけど
初版は昭和52年、っていうんだからかれこれ30年前だー ̄□ ̄
オドロキです。
タイトルは結構好きな感じです。


学園で次々起こる女子生徒のナゾの死に、
同じ学校の女子高生が推理しながら真実に迫るというお話。


ストーリー自体は学園に盗品オークションを絡めてきたり、
黒幕が意外な人物だったり、とそれなりにおもしろいんだけど
(私はオチを知っていたのでなんとも言えませんが)
まずギャップを感じたのがやはり時代背景。
だって30年前だもんね。
携帯もないから家の電話だし、したがってよくすれ違いも起こる。

そして何より違いを感じたのは、登場する女子高生の言葉遣い!

「何やってるのかしら?」
「もっと近くに行ってみましょうよ」

これが昭和52年当時の女子高生の会話です^−^

この原作を読んだのは初めてだったけど、
高校で大人気の先生が女子高生と「清らかな交際」をしていたり
大学生と高校生が婚約しちゃったり
学校がとんでもない目的で設立されたことがわかったり、
となんとも突っ込みどころ満載でした。

これを当時何の違和感もなく読んでたのか・・・。
時代の流れは大きいものですね〜


死者の学園祭

著者名:赤川次郎(著)
出版社:角川書店
出版年:1983.01
ISBN :4041497108

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2006年09月18日

小川洋子 「博士の愛した数式」

芥川賞作家小川洋子さんの作品。受賞作ではありません。
映画化で話題にもなりましたね〜。


独身の天才数学博士と、その元に派遣されたシングルマザーの家政婦、
そして彼女の10歳になる息子。
博士には過去の事故が原因で、80分しか記憶が持たないという障害があった・・・
と、現実的な設定と非現実的な設定が同居した作品。


過去の思い出を記憶しておけない博士の悲しさと絶望感、
そしてその絶望感すら80分で消えてしまう彼を慈悲深く見つめる家政婦。
彼女は、その悲しい感情を彼に極力感じさせないように奔走する。
また、数学にしか興味のない博士と、無垢な存在である家政婦の息子との交流。
最初は雇用契約でめぐり合った3人が、徐々に心の深い部分でつながりあっていく。


時には悲しく、時にはほんわかと。
穏やかな感情が交錯しながら一気に読み進められた作品だった。
読み終わったあとには、愛情のぬくもり、穏やかな時間に対する感謝の心、
とにかく色々な感情が余韻として残る、読了感がほわほわと感じられた。


記憶がなくなるってどういうことだろう・・とふと考える。
博士は毎日毎日、1から人間関係を築き、
1から日常を確かめるところから始めなければならない。
それは本当に重労働だと思う。

逆に考えると、
自分は昨日まで築いたことすべての上に立って今日を生きているということ。


人間は誰しも忘れたい過去がある。
その過去を時々思い出しては、やりきれない思いに駆られる。
でも同時に忘れたくない思い出もある。
そんな思い出を振り返って、幸せな気持ちに浸る。
どちらも自分自身の築いた足跡に違いない。
足跡があるからこそ今の自分があるし、それを忘れちゃいけない。


心穏やかになりたいときは手にとって読み直したい本です。
本当にオススメ!

博士の愛した数式

著者名:小川洋子(著)
出版社:新潮社
出版年:2003.08
ISBN :410401303X

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2006年09月13日

岡嶋二人「チョコレートゲーム」

作家の近内は妻と一人息子・省吾との3人家族。
その省吾の様子が最近おかしいなと感じていた頃、
省吾の中学校で殺人事件が起きる。
殺人のナゾと省吾の関与を解明しようと決意した矢先に第二、第三の事件が。
息子の名誉回復をかけて、「父親失格」だった近内が事件の解明に乗り出す。





あっという間に読んでしまいました。
ミステリーとしては王道を行くような展開なんだけど、
まったく飽きさせないスピードと新たな展開のテンポ。
素晴らしくよくできたミステリーだと思います。

なぜ殺人が起きたのか?
なぜ級友たちは口をつぐんでいるのか?
チョコレートゲームとは何か?
1つのナゾが解ければ新たなナゾが出てきて・・・と
犯人がわかった後もなお、新たなナゾが飛び出てきておもしろい!

今まで息子に構っていなかった父親が、
突如全身にアザを作り、あからさまに父親に反抗し、
挙句の果てに無断外泊をするようになった息子の変化にとまどいます。
そして自分の慢心からきた息子への態度が取り返しのない事態になってしまう。

そんな自分への痛烈な反省が
事件を解く強い意思に変わっていくんだよね。
その父親としての責任感が最後まで崩れていないところに
この話のもう1つの魅力があると思います。

トリックで魅せるというよりは、
家族愛で魅せるミステリーかな。
愛する息子を最後まで信じた先に待ってるもの。
ラストの犯人と対峙する近内の姿に感じ入りました。
犯人も手段こそ違ったけど、「家族愛」の末の犯行だったんだよね。


ところで岡嶋二人って、本当に「二人」の作家さんなんですねー。
全然知らなかった。
藤子不二雄と同じだね^−^
しかももう解散して、別々の作家活動をなさっているとか。
もっと読みたいな〜。

チョコレートゲーム

著者名:岡嶋二人(著)
出版社:講談社
出版年:1988.07
ISBN :4061842412

posted by izura at 11:51| Comment(2) | TrackBack(1) | 作者−あ行