失踪した婚約者を探してほしいと親戚の若者から頼まれたところから
ストーリーが始まる。
彼女の行く手を追ううちにさまざまな事実や社会問題が浮き彫りになっていき・・・
というお話。
いやあ、一気に読みました。
何度予想を裏切られた展開があったことか(笑)
本を読みながら「えっ」と思わず声が出てしまうほど。
そして、本筋である「失踪者を追う」という以外に通っている太い筋は、
「カード破産」。
一昔前に流行語のようになった「カード破産」。
クレジットカードが広く普及し、
手元にお金がなくてもすぐに買い物ができる手軽さがウケて
次から次へと買い物をする人が増えた。
借金を返済するためにまた借金し、というふうに
だるま式に借金がかさんでいく。
でも手軽にお金を借りられるから、歯止めがきかない。
結果的に借金は自分が返せる額をとっくに超え、
自己破産という道を辿る人もいる。
そんな「お手軽社会」カード社会がこの作品の背景にある。
カード破産って聞くと、どうも自分に縁のないもの、
「お金にだらしない人がなるんじゃないの?」と思ってしまっていたが、
本の中でカード破産した女性は言う。
「わたし、ただ幸せになりたかっただけなの。」
失踪した女性の心情、もう一人行方不明になっている女性の心情が
とても丁寧に細やかに書かれているので、
500ページも飽きずに中だるみもせずに、ある程度の緊張感を持って読める。
ただ人並みの幸せをつかもうと必死にもがく2人の女性がとても痛々しい。
またその2人の女性の行方を追う警察官の気持ちも、
好奇心からだんだん同情に変わっていく。
その流れが実に見事です。
幸せといえば、
本の中である女性が幸せについて語る場面がある。
「蛇が脱皮するの、どうしてだかわかります?
一所懸命、何度も何度も脱皮しているうちに、
いつかは足が生えてくるからなんですってさ。
今度こそ、今度こそ、ってね。
べつにいいんじゃないのね、足なんか生えてこなくても。
立派に蛇なんだからさ。
だけど蛇は思ってるの。足があるほうがいい。
足があるほうが幸せなんだって。
この世の中には、足は欲しいけど、脱皮に疲れてしまったり、怠け者だったり、
脱皮の仕方を知らない蛇は、いっぱいいるわけよ。
そういう蛇に、足があるように映る鏡を売りつける賢い蛇もいるというわけ。
そして、借金してもその鏡がほしいと思う蛇もいるんですよ。」
これ読んだとき、うーんと唸ってしまいました。
確かに、自分を自分以上に見せるモノが今の世の中には溢れ返ってるものね。
そしてラストシーン。
この後の展開は、読者の想像にバトンタッチされる。
ドキドキのラストです。
宮部さんは江戸時代モノも書いていて、そっち方面は未読ですが、
何冊か読んだ中では、この「火車」が一番好き。
オススメです^−^
火車
著者名:宮部みゆき(著)
出版社:新潮社
出版年:1998.01
ISBN :9784101369181

