2006年10月31日

桐野夏生 「OUT」

深夜工場で働く4人の主婦。
それぞれ家庭にさまざまな事情を抱えていたが、普通の日常を過ごしていた。
その日常が、1人が発作的に夫を殺してから一転する。
その犯罪を隠そうと、死体解体を行って完全犯罪をもくろむ4人。
だが思わぬところで新しい人間が絡んでいき、
事態はどんどん予測のつかない方向へ進む・・・というお話。


いやー、おもしろかった^−^

何がおもしろいって、ラストがまったく読めなかった!
ラストが気になるとどんどんページは進む。


4人それぞれの性格があるけど、その性格が最後までぶれてないところもいい。
4人が抱える心の闇も、私たちに同感できるものばかり。
日常誰にでもある闇が、
こんなダークなことをやらかすまでになってしまうかと思うと、
空恐ろしくなる。
まあ、普通の主婦がここまでできるだろうか?という疑問は残るけど。


しかし桐野さんの作品は2つしか読んでないけど、両方に倒錯した世界が出てくる。
果たしてこの人の特徴なのかしらん・・・^−^;;

まあちょっと説明くさい表現には違和感を覚えなくはないけど、
とてもよくできたミステリーに仕上がってると思う。
映画化されているそうだけど、
どういう描写になってるのやら・・・どきどきぶるぶる

OUT 上

著者名:桐野夏生(著)
出版社:講談社
出版年:2002.06
ISBN :4062734478


OUT 下

著者名:桐野夏生(著)
出版社:講談社
出版年:2002.06
ISBN :4062734486

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2006年10月28日

杉本苑子 「今昔物語ふぁんたじあ」(初・続・続々)

おそらくこの本は現在廃刊になってると思うけど、
とてもいい本なので紹介しちゃおう^−^


タイトル通り、古典『今昔物語』を現代語訳したもの。
でも話自体が庶民の話で堅苦しくないので、古典が苦手な人もすんなり読める。


『今昔物語』とは、平安期の庶民の説話みたいなものだ。
だから庶民の生活がユーモアも交えて書かれており、とても楽しい。

当時の農民といったら、もちろん生活するので精一杯。
江戸時代のような娯楽などもほとんどなかったのではないかなあ。
私達が歴史で学習する平安国風文化は貴族の文化であり、
庶民の生活とはかけ離れているしね。


唯一庶民が心のよりどころにしていたのは、
おそらく浄土の教えだったんじゃないかな。
仏教はどんどん広がりを見せ、とくに
「現世で良い行いをすると死後極楽浄土へ行ける」という浄土の教えは、
農民に急速に広がっていったそうだ。


今昔物語では、お上、地獄、罰などに恐れおののく姿、
普段の生活に喜怒哀楽豊かに感じ入る姿をコミカルに描いている。
今の時代でも十分楽しめる作品だと思う。


今昔物語ふぁんたじあ

著者名:杉本苑子(著)
出版社:講談社
出版年:1978.01
ISBN :4061314378




今昔物語ふぁんたじあ 続

著者名:杉本苑子(著)
出版社:講談社
出版年:1978.05
ISBN :4061314742




今昔物語ふぁんたじあ 続々

著者名:杉本苑子(著)
出版社:講談社
出版年:1980.04
ISBN :4061316249

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2006年10月24日

南部昭行 「あなたは『石油製』化粧品を肌につけている!?」

なんと衝撃的なタイトル!
知識として化粧品類に石油成分が入っているのは知っていたけど、
こうバーン!と言われるとやはり衝撃的^^;;


読んでみると、化粧品などに含まれている合成成分の恐ろしさ、「成分表示」の真実、
合成成分の種類と引き起こす影響などが書かれてある。
ふと周りの化粧品、洗剤、歯磨き粉など直接人体に関係あるものを見てみると、

・・・・・・・・・まあ、あるわあるわ。有害成分。(−−)


ちょっと断言的過ぎていて、さらに後半は宣伝が多分に入っている気もするけど
(著者は化粧品メーカーの社長さん)
知識として化粧品の危険性を知っておくのはとてもいいと思う。


一番ためになったなあと思うのは、
「天然成分配合」という表示トリック。
よくCMでも「天然成分配合」というアピールがされているし、
消費者側も安全だと思い込むところがある。
ところが、これは天然由来成分がちょっとでも入っていたら「配合」というらしい。
本当に天然由来成分のが買いたければ、「100%」と表示されているものを買え、と。


確かにその通りだわ(−−)
今までこりゃ安心だ!と思ってことが覆されてしまったけど、
売る側は別段嘘をついてないわけだし、
勝手に消費者側が「安全・安心」と思わされてしまっただけ。
食べ物についても同じことが言えるのではないか、と恐ろしくなった。


この本を読んでからというもの、
かならず成分表示を見るようになってしまった。
私は肌が弱いってわけじゃないので今まで少ししか気遣ってなかったけど、
敏感肌の人はちょっと化粧品の種類を変えただけで症状が悪化するみたい。


特にアレルギーやアトピー性皮膚炎に悩まされている人は、
一度身の回りのものについて再確認したほうがいいかもしれない。
洗剤の有害成分が服に付着したままその服を身につけていたら、
肌が荒れるのはあたりまえのわけだし。


余談ですが、
うちの近所に有害物質が一切入ってないものだけを使っている美容室がある。
その美容室に入っても、美容室独特の強いにおいが全くしない。
パーマ液もつんとしたにおいは全くない。
担当の美容師さんは、この店で働き始めて以来手が荒れたことがないそうな。

もう1つ余談で
この本を持ってきてくれた友達は、
現在すべて天然成分100%のものを使っている。
髪の毛にはムースの変わりに椿油を使うほどの徹底振りだ。
彼女の肌はすべすべ、髪は光り輝いている。
どうやら効果は本物みたい^−^

あなたは石油製化粧品を肌につけている

著者名:南部昭行(著)
出版社:現代書林
出版年:2001.08
ISBN :4774503673

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2006年10月21日

金美齢 「日本がこどもたちに教えなかったこと」

教育を扱った本はいくつもあるけど、
筆者の金美齢さんは番組のコメンテーターで出演しているのを見たことがあったし、
そこで建設的な意見を穏やかに話す様に好感を持っていたので、
読んでみることにした。


内容は、
第1章 人間形成は家庭から
第2章 学校で何を学ぶのか
第3章 責任ある社会をつくるために
第4章 子育てと国家
終章 強く美しい日本の未来に向けて


第1章があまりに的を得すぎていて、あまりに勉強になりすぎていて、
後半になるにつれてあまり印象に残っていないの・・^^;;

とにかく第1章はうなずきすぎて首が疲れた(笑)
少子化の弊害、それは社会的にはもちろん大きいけど、
子ども一人一人にとっても深刻であるということを改めて納得。

つまり今の世の中では、金がある、モノがある、でも子どもは少ない。
そんな中で親も社会も、子どもに「自立をはばむための手をかけすぎる」のだ。
手をかける目的を考えずに闇雲に口や手をはさんでいても、
子どもの自立心は生まれないと思う。


難しいことのようだが、考えれば至極簡単なことなんだよね。
自分の子ども時代を思い起こす記憶力と、
自分の子どもの将来を予測する想像力さえあれば、
今自分が手を出すべきかなんてわかりそうなんだけどな・・。


たぶん理想なのは、ある程度の年齢になったら
「いつもかけてやるのは視線だけ。
細かく見つめて助けが必要だと判断したときにだけ手を貸す」(本書より)
ということなんだろうけど、
実際には色々な感情が入って一筋縄ではいかないんでしょうね^−^;;


金さんがこの本で「子育ては闘いだ」と言っているが、まさしくそうだと思う。
子どもは親の背中を見て育つなんていうが、
その背中は立派じゃなくてもいいから誠実でありたいものだ。


そして日本人の美徳は
「天知り 地知り 己知る」
という道徳規範だと金さんは述べている。
誰も見てなくてもお天道様に恥じるようなことをしてはいけない、という道徳観。

そういえば、よくお母さんやおばあちゃんに、
「悪いことは必ずお天道様が見ていて罰があたるんだよ」
「人様の前でみっともない」とよく叱られたっけ。
時代は変わっていくけど、長年の日本の暮らしで生まれた考え方は、
自分の後世にも伝えたいなあと思った。


※この本はほんつなリストにありませんでした
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2006年10月16日

アラン・ピーズ 「話を聞かない男、地図が読めない女」

生物学的な本能やホルモン分泌などの関係上、
男女の差がどのくらいはっきりしてるのかをわかりやすく説明してある。
元来翻訳本はあまり得意ではない私でも、
日本語がわかりやすくすんなり入ってきてgood^−^


読んでいて、うなずけるものばかりだった。
話を聞かない男に対して
「自分に興味を持たなくなったからかも」とくよくよ心配する女。
または、地図が読めない女、うまく説明できない彼女にいらいらする男。


まさしく思い当たることばかり!
「なんでこんなことでくよくよしちゃうんだろう・・・」
「なんで些細なことでもイライラしちゃうんだろう・・・」というのは、
個人的な性格によるものだと自己嫌悪に陥ることもしばしばだったけど、
どうやら性の特性によるものみたい♪
恋人や夫に対して頭にくることも、この本を読めば、
「なーんだ、しかたのないことなのか〜」と思えちゃう。


もっと思い当たる部分が多いのは、私よりも夫だった。
テストステロンというホルモンが多いほど男性的らしいが、
夫はあまりに自分の性格がこの本にあてはまるので、
「テストステロン多いんだなー、俺」と妙に納得顔(笑)
でも、「テストステロン多い=男らしい」と勘違いしてナイデスカ?(−−)


いずれにせよ、ちょっとの暇つぶしに楽しめる本ですよ〜





話を聞かない男、地図が読めない女

著者名:アラン・ピーズ(著)
バーバラ・ピーズ(著)
藤井留美(訳)
出版社:主婦の友社
出版年:2002.09
ISBN :4072352179

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2006年10月14日

吉田修一 「7月24日通り」

タイトルと表紙に一目惚れして図書館から借りてきた、
吉田修一さんの「7月24日通り」。
タイトルはポルトガル・リスボンにある通りの名前だそうだ。
どれだけおしゃれな話なのだろうと思ったら、日本の話だった^−^;;


あるOLの視点からかかれている。
ハンサムな弟とその彼女、妻を亡くした自分の父、
高校時代の憧れだった先輩その彼女、
そして今はその彼女と結婚している会社の同僚。
ふと知り合った普通の男。
日常のありふれた光景が、自分の町をリスボンに重ね合わせた幻想とともに流れていく。


淡々とかかれているようで、すべてがつながっている。
なぜ自分の町をリスボンに重ね合わせるようになったのかその理由と、
自分と周囲との関係が絶妙!

ありふれた光景なのに、吉田マジックにかかると少しスタイリッシュな光景に変身する。
さらさらっとした文体も大好き。

ラストは私の予想とは違っていた。
ということは、私は「まちがえたくない」人間なのだろう。


間違ってしまう人生も間違えない人生も、なかなか粋なものですがね^−^

今度映画化されるみたいので、見てみたいな。


7月24日通り

著者名:吉田修一(著)
出版社:新潮社
出版年:2004.12
ISBN :4104628034

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2006年10月12日

桐野夏生 「顔に降りかかる雨」

この後に続く「村野ミロシリーズ」のプロローグ的作品。


主人公ミロの親友が、恋人の闇の金1億円とともに姿を消した。
1億円を取り返したい暴力団に疑いをかけられたミロと親友の恋人が、
お互い不信感や疑惑をもちながらも、協力して解明に動き出す。
というお話。


最近のミステリーに多いと思うんだけど、
本線であるミステリーに加えて、登場人物の人間関係が緻密に描かれている。
この作品の場合は、主人公ミロと失踪した親友の恋人、成瀬の関係だ。

お互い種類の違う暗い過去を持ち、
その過去がわかるたびに疑ったり憎んだり親しみを感じたり、と
関係が微妙に変わっていく。
お互いに失踪した親友と共謀してるんではないかという疑念が交錯しながら、
くっついたり離れたりする関係にも注目するともっと楽しめると思う。


そしてもう一つの関係はミロと親友耀子の関係。
最初は親友耀子が人の金を持ち逃げするはずがない、
とまったく疑っていなかったミロが、
隠された事実を暴いていくうちに親友が自分に見せていなかった内面を知り、
疑いの目で親友を見るようになっていく。


ネオナチやボンデージ、死体愛好、と衝撃的な話を絡めながらのストーリー。
ミステリーとしてはおもしろいし、
それほど状況が混み合ってもいないので一気に読めると思う。
でもけっこうどんより系ミステリーかも^−^;;


顔に降りかかる雨

著者名:桐野夏生(著)
出版社:講談社
出版年:1996.07
ISBN :4062632918

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2006年10月10日

山本文緒 「パイナップルの彼方」

主人公は23歳の平凡なOL、鈴木深文(みふみ)。
短大時代からの付き合いである結婚に夢見て玉の輿婚を果たしたなつ美と、
現実から逃げたくて仕事も男も長続きしない月子という個性的な友人はいるものの、
本人はいたって平凡なOL。
普通の彼氏、普通の同僚を持つちょっとドライなOLの普通の生活に、
我の強い女性社員が入ってきた事から波風が立ち始める。


これほどまでに日常を余すとこなく描けるとは!とびっくり ̄□ ̄
みーんな登場人物は、自分の周りにいるような人。
色々なタイプの人生が飛び交い、主人公が初めて自分の生き方を変更させることになる。


幸せに正解なんてない。
人生に正解なんてない。
何が幸せで何が不幸せか、
自分の今に満足なのか不満なのか、
決めるのはいつも自分だけ。

そんなことをふと気づかせてくれる小説です。


結局は「自分はこういう人間だ」「あの人はこういうものの見方をする」と
自分で自分を縛らず、他人を自分だけのメガネで見ないことが大事なのかな、と思う。
難しいけど、自分の殻に閉じこもりきりではそこまでで終わる。
自分の世界観の中で幸せと感じられるかもしれないけど。
だからと言って、他人の世界観に惑わされるのも嫌だ。

これからも試行錯誤を繰り返しながら
いっぱい他人を巻き込んで、いっぱい他人に巻き込まれて、
自分では気づかなかった感情や物欲に気づいて、
嫌なときには少し逃避して、嬉しいときには浮かれて、
日々変化しながらこれからも生きていけたらおもしろいなあ ̄ー ̄

そんなことを感じた一冊でした。




パイナップルの彼方

著者名:山本文緒(著)
出版社:角川書店
出版年:1995.12
ISBN :4041970016

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2006年10月09日

谷川俊太郎編 「祝婚歌」

これはタイトルどおり、結婚を祝う詩を収めた詩集。
谷川俊太郎さんを始め、国内外合わせて27人の詩人が
それぞれの世界観で結婚をとらえている。

この中でも私が好きなのは、谷川俊太郎さんの「序詩」と、
吉野弘さんの「祝婚歌」。



「序詩」より

私はいる
あなたのかたわらに
いつまでも
あなたはいる
私のかたわらに     (後半より引用)



「祝婚歌」より

生きていることのなつかしさに
ふと 胸が熱くなる
そんな日があってもいい
そして
なぜ胸が熱くなるのか
黙っていても
二人にはわかるのであってほしい    (後半より引用)



この本は、私の中学校時代の恩師である先生が結婚祝いに送ってくれた本なので、
思いいれもひとしおです^−^


祝婚歌

著者名:谷川俊太郎(編集)
出版社:書肆山田
出版年:1981.07
ISBN :4879950386

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2006年10月08日

綿矢りさ 「蹴りたい背中」

ストーリーは、ある女子高校生の日常を描いたもの。
クール気取りの主人公に、一風代わったクラスメートの男の子。
クラスで余り者の2人が不思議な関係を紡いでいく。


まあはっきり言ってしまえば、ストーリーはあってないようなもので^−^
でも心理描写はとても細かい。
「ああ、こういう気持ちになったなった」とか
「わかるー」と同感できる部分が随所にある。
ストーリーが希薄だけど心理描写は丁寧なので、
ちょうどバランスがとれて心地いい読み応えだ。


気だるげに見せるためにプリントをちぎってみせる。
自分もそうだったから、
グループに染まろうとして無理に作り笑いしている人間をすぐ見抜ける。
媚びる先生と甘える生徒を冷めた目でみる。
先生のみみっちい企みに泣きたくなる。
そんな主人公。

でも友人とのつながりを求めてる。
集団の中の孤独を恐れている。
だから「背中を蹴りたく」なるんじゃないかな。

なんとなくわかるな〜。
私はもっと小心者だから、
学生のときは集団の中にいながらにして冷めた目で見てた。
集団の中で緊張してるのに、独りになることを選べなかった。
そしてそんな自分に何の疑問ももたなかった。


ようやく20代を半分くらい過ぎてからかな、とても自然体になれたのは。
でも過去の記憶を忘れたわけではないから、
この女の子のことはとても共感できる。

というわけで、現代の若者の縮図みたいな作品だと思う。
若い人ほど共感できるのかな〜と思います^−^


蹴りたい背中

著者名:綿矢りさ(著)
出版社:河出書房新社
出版年:2003.08
ISBN :4309015700

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2006年10月07日

横山秀夫 「半落ち」

1人の警察官が妻を殺して2日間空白の時を過ごし、警察に出頭。
警察官が殺人を犯すという非常事態に陥った警察機関のホンネとタテマエ、
そして空白の時間をそれぞれの立場、思いから追求していく、
刑事、検事、弁護士、裁判官など。
それらが絡み合っていて被疑者の思いに近づく。


構成も、登場人物それぞれをたくみに描写した6章からなっている。
それぞれの立場から違う角度で被疑者を見つめる、という構成は、
私は読んだ経験がなかったので新鮮だった。


最初は警察の業界用語や組織の複雑さが出てくるので、
お堅い本なのかと思ったけど、
少しずつ登場人物に慣れ始めるころには、夢中になって読んでいた。


読み終わると、感動が胸に染み渡る感覚になった。
止むに止まれず妻を殺した警察官が
どんな思いで空白の2日間を過ごし、
どんな思いで出頭して取調べを受け、
どんな思いで法の裁きを待っているのかが、少しずつ紐解かれる。
それぞれの人物が仕事で割り切らなければならない部分と本音の部分で葛藤するのも、
とても共感できた。


そして、空白の2日間の謎、被疑者の思いがわかったとき、
何ともいえぬ余韻がじわわーっときた。


映画もまた秀逸。
でも行間にこめられたモノに思いをはせるには、やはり本が一番だと思う。

横山秀夫さんは緻密な場面描写がすばらしい!
胸が熱くなる作品です^−^



半落ち

著者名:横山秀夫(著)
出版社:講談社
出版年:2005.09
ISBN :4062751941

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2006年10月06日

清水義範 「永遠のジャック&ベティ」

清水作品の中でもお気に入りの一冊となっているのが、
この「永遠のジャック&ベティ」。
短編集です。


内容は

永遠のジャック&ベティ
ワープロ爺さん
冴子
インパクトの瞬間
四畳半調理の拘泥
ナサニエルとフローレッタ
大江戸花見侍
栄光の一日



どれも読んでて「ぷっ」と噴き出したくなるおもしろさ( ̄m ̄)
どれも読んでて「わかるー!」と同調したくなる絶妙さ。
内容的にはちょっと昔のことのように感じるものもあるけど、
大人ならかなり楽しめると思う。


私が一番気にいっているのは、表題作「永遠のジャック&ベティ」。

中学校の英語の教科書、不自然な会話だなあと思ったことはありませんか?
「私はベティです。あなたはジャックですか。」
「はい、ボクはジャックです。」
「あなたは昼食に何を食べますか」
「私はサンドイッチたちを食べます」
など。ばか丁寧というか、そんな会話が教科書上で繰り広げられている。


そこに目をつけたのが清水さん。
模倣を題材にして作品を作り上げていく彼お得意のパスティーシュで
話をつくりあげてしまった。
教科書上のジャックとベティが数十年の時を経て再会し、
言語中枢が麻痺して中学生の言語能力レベルに下がってしまい、
会話したといたら・・・という設定になっている。


もう一つお気に入りは「ワープロ爺さん」。
ワープロを買ったばかりのお爺さんが、悪戦苦闘する様を描いている。
誰にでも覚えがあるでしょう。コンピュータの誤変換。
それを題材にして物語ができあがってるんだけど、これまた絶妙!

「どうも変な児がでる。幹事にならん名。」といった具合になっちゃうので、
だんだんイライラしていく爺さんの姿がおちゃめでおもしろい^−^



永遠のジャック&ベティ

著者名:清水義範(著)
出版社:講談社
出版年:1991.09
ISBN :4061849840

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2006年10月05日

片山恭一 「世界の中心で愛をさけぶ」

ストーリーは、高校生サクと恋人アキとの物語。
最後はアキが死を迎え、サクは・・・というストーリー。
すいません、うろ覚えです。


で、
ごめんなさい、私はすすすーっと読んでしまいました。
もっとじっくり読めばもっと響くものがあったかもしれなかったし、
ベストセラーになった理由もわかったのかもしれない。
これだけブームになったのだから、大きな魅力があるのだろう。


でも、私は感じられなかった。
涙もろい私がまったく泣けなかった。
「泣きながら一気に読みました」という帯に踊らされている私^−^;;

泣けなかった理由をあれこれ考えてみる。
純粋さを自分が失ってしまったのか?
表現がステキ過ぎて、現実感を感じられなかったのか?
もうこんな恋愛はできないと、わかってしまっているからなのか?


いまだ理由はわからず。
もう一度読んでみようかと思う今日この頃です。


ところで、アキちゃんはこんなことをサクくんに言っています。

「わたしはね、今あるものなんか、みんなあると思うの。
みんなあって何も欠けてない。
だから足りないものを神様にお願いしたり、あの世とか天国に求める必要はないの。
だってみんなあるんだもの。
それを見つけることの方が大切だと思うわ。
いまここにないものは、死んでからもやっぱりないと思うの。
いまここにあるものだけが、死んでからもあり続けるんだと思うわ。」


このセリフが一番好き。
高校生で人生観が形成されているアキちゃん、すご過ぎです。
彼女が作品の中で崇高に感じられるのは、こういう感じ方から来るのかな。


世界の中心で、愛をさけぶ

著者名:片山恭一(著)
出版社:小学館
出版年:2001.03
ISBN :4093860726

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吉田修一 「最後の息子」

表題作「最後の息子」、「破片」、「Water」の3篇からなる作品集。


「最後の息子」・・・オカマの閻魔ちゃんと暮らす「ぼく」の日常を、
          普段回していたビデオカメラを通じて描いた作品。
          愛されることを願いながら奇妙な生活を続けるぼくが
          淡々と描かれている。

「破片」・・・父、兄、弟の男家族を描いた作品。それぞれの抱える問題を描いている。

「Water」・・・高校水泳部でがんばっている「ぼく」の視点から見た
       家族、友情を描いた作品。


で感想は、

いい(・▽・)


最初の2篇は、特にさわやかな状況を書いているわけではない。
虚無感すら感じるんだけど、
なんというか、ちょうどいいほどほどの虚無感なのです。
読み終わった後にどよーんとする感じは全くなく、暗さもなく、
無気力な主人公に愛しさすら感じちゃう。


「最後の息子」の中には愛されることについてぼくが語っている場面があり、

愛されようとするのは、救いようのない悪気だと思う

という一節が心に残った。


確かに誰かに愛されるために、誰かの気をひくために、
後から考えると浅はか過ぎて顔を覆いたくなるようなことを
平気でしてしまうことがある。

泣いてみたり。どうしようもないわがままを言ってみたり。
突っぱねてみたり。しがみついてみたり。


最後の1篇「Water」は、青春真っ只中の少年の目を通して描かれた世界が、爽快感いっぱい。
彼の家族には悲しい過去があったが、
少年のまっすぐな目で真剣にその意味を問おうとしている。
そして彼の周囲の友達、後輩。
清涼感ただよう作品で、これが私の1番のお気に入り♪

作品の後半で、少年は死んだ兄の日記を見つける。


たぶんこれからのボクの人生は、何を持っていくかで決まるのだと思う。
どんな思い出をもっていくかで、ボクの人生は決まるのだ。


若いときに出会いたい一節だなあ、と思う。



最後の息子

著者名:吉田修一(著)
出版社:文藝春秋
出版年:1999.07
ISBN :4163185704

posted by izura at 00:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 作者−や行